こんにちは、ももブログです。
今日は北村裕花さん作の絵本『ねこです。』をご紹介します。
表紙いっぱいに描かれた大きな猫の顔。
鮮やかなオレンジ色の毛並み、真っすぐに見つめてくる緑色の瞳。
その強い存在感に思わずドキッとさせられる方も多いのではないでしょうか。
私自身も初めてこの本を手に取ったとき、絵本というよりも「一枚の大きな絵画」に出会ったような気持ちになりました。
ただ「ねこです。」と語る潔さ
この絵本の大きな特徴は、文章のシンプルさです。
出てくる言葉の多くは「ねこです。」の一言。
ただそれだけなのに、不思議とページをめくるたびに違うニュアンスが生まれます。
寝転んでいる猫を見れば「くつろいでいるねこです。」と感じられるし、じっとこちらを見つめている絵からは「何かを考えているねこです。」という空気が漂います。
言葉を付け足す必要がないほど、絵の力が雄弁に語りかけてくるのです。
子どもに読み聞かせをすると、最初は「ねこです。」「ねこです。」と繰り返すだけでクスクス笑っていたのに、次第に「この猫は眠そうだね」「怒ってるのかな?」と想像を広げてくれました。
大人も子どもも同じ言葉を聞いて、自由に感じ取れる余白があるのが、この絵本の魅力だと感じます。
迫力ある絵が伝える「猫という存在」
北村裕花さんの描く猫は、とても力強く、それでいてあたたかみがあります。
毛並みの一本一本が生き生きとしていて、触れればふわっとした感触が伝わってきそうです。
そして何より印象的なのが瞳。
表紙の大きな緑色の瞳に見つめられると、「あなたは何を見ているの?」と問いかけられているような気持ちになります。
絵本の中で猫はさまざまな姿を見せますが、そのどの瞬間も「ただ猫である」ことが伝わってきます。
人間に媚びるわけでもなく、特別なことをしているわけでもなく、そこにいるだけで存在感がある。
猫を飼ったことがある人なら「そうそう、猫ってこういう生き物!」と共感するでしょうし、そうでない人でも「生きものの存在感ってこんなにすごいんだ」と気づかされるはずです。
大人にこそ響く「余韻」
子どもにとっては面白くてシンプルな絵本。
けれども大人が読むと、その奥には「生きものをどう見るか」という問いが潜んでいるように感じます。
私たちはつい、猫や犬を「かわいい」「おりこう」「いたずらっ子」などとラベルを貼って見てしまいます。
けれども『ねこです。』は、そんな言葉を削ぎ落とし、ただ「ねこ」として描いています。
だからこそ、読んでいる側は「自分はこの猫をどう感じているのか?」と向き合うことになるのです。
「ねこです。」というシンプルな一言に込められた深さは、読む人によってまったく違う世界を見せてくれます。
まるで心を映す鏡のように。
読み聞かせの楽しみ方
もし小さなお子さんと一緒に読むなら、ぜひ声のトーンを変えながら「ねこです。」と読んでみてください。
ゆったりとした声で読むと落ち着いた猫に見えますし、少し高めの声で読むと遊びたそうな猫に見えるかもしれません。
その時の気分や猫の表情に合わせて自由に声を変えると、子どもも「ほんとだ、今日は元気そう!」と感じ方を広げてくれます。
また、大人同士でこの絵本を開いてみるのもおすすめです。
「私はこの猫、ちょっと怒っているように見える」「私は眠そうにしか見えない」――そんな会話をするだけで、お互いの感じ方の違いに気づけて面白い時間になります。
まとめ:猫という存在を丸ごと受け止める絵本
『ねこです。』は、一見するとただの猫絵本。
けれどもページをめくるごとに「猫という存在をまっすぐに見つめる」体験をさせてくれる一冊です。
子どもにとってはシンプルで楽しい絵本。
大人にとっては存在の深みを感じさせるアート。
それぞれが自分の視点で楽しめる懐の広さこそ、この絵本の大きな魅力だと思います。
大きな瞳に引き込まれながら、猫の存在をじっくり味わう。
そんなひとときを、ぜひ皆さんも体験してみてください。
おまけ:最後のページ「だいたいねこです」と書かれていて、猫に混ざってかわいい動物さんが混じってて…そこも大好き(^^)

